金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

班のみんなは私の身体を気遣ってか、先生が居なくなってからも私たちの関係を深く追及するようなことはなかった。


しばらくすると先生がお医者さんを連れて戻ってきて、私はいろいろ体調を確認された後で、もう大丈夫だから帰っていいと告げられた。


お医者さんが病室を出て行ってしまうと、先生が私の傍らに立って言う。



「お家の人にはさっき無事だと連絡しておきましたが、本人の元気な声を聞きたいと思うから、あとで電話してあげてくださいね。本当は駆けつけたいところでしょうけど、場所が場所なので」


「はい……いろいろご心配おかけしてすみません」


「ううん、そんなこときみは気にしなくていいんです。着替えて、ホテルに帰りましょう。僕たちは外で待っていますね」



先生がみんなを連れて、部屋を出て行く。

扉が閉まるとなんだか肩の力が抜けて、ふう、とため息が出てしまった。


明日も班ごとに行動するのに、こんな雰囲気で大丈夫なのかな……


有紗はきっと話せばわかってくれるけど、土居くんや、他の皆は……?


もともと先生に話しかけるだけでかなり勇気が必要だったのに、こんなことになって、余計に近づきづらくなってしまった。


監視の目が増えたみたいで、苦しいよ……


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