金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
ドクン、と心臓がいやな音を立てた。
触れていたのは一秒よりも短い時間だったと思う。
けれど私の身体はたちまち震え出し、目の前が暗くなった。
「―――――っ」
現実世界が見えなくなった代わりに、まぶたの裏に映ったのは……二度と思い出したくなかった、岡澤の顔。
「大丈夫?顔色が………」
「いやっ!!触らないで――――っ!!!!」
腕に伸ばされた恩田の手を、私は思いきり振り払った。
もつれそうになる足で必死に歩き、壁づたいに自分のクラスへと足を進める。
「保健室に行った方が……」
「…………大丈夫、です」
恩田の心配そうな声を無視してふらふらと教室まで行く途中、私はずっと唇を噛みしめていた。
どうして……
どうして思い出してしまうの?
私、これからは楽しい毎日を送るつもりなの……
お願いだから邪魔しないで――――……