金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
私の問いに、先生は目を閉じて安心したように大きく息をついた。
「嫌われてしまったかと思いました……」
頼りなくそう呟く先生を見ていると、もう一度彼を信じるという選択は、間違っていないことのように思えた。
「いっそ嫌いになれれば、もっと楽だったのかな……」
「……そんなこと言わないで下さい。僕には三枝さんが必要なんです」
「……信じて、いいんですよね」
「うん。もう二度と、あんな思いはさせない……」
先生はそう言って、明るい道端だからか遠慮がちに、私を抱き寄せた。
――――これで、良かったんだよね……?
小夜子さんを思い出させる沖縄の地とも、あと少しの時間が過ぎればお別れだ。
そうすれば、きっと不安だって自然に薄れる。
先生は、私とこれからの時間を重ねてくれる。