金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

私の問いに、先生は目を閉じて安心したように大きく息をついた。



「嫌われてしまったかと思いました……」



頼りなくそう呟く先生を見ていると、もう一度彼を信じるという選択は、間違っていないことのように思えた。



「いっそ嫌いになれれば、もっと楽だったのかな……」


「……そんなこと言わないで下さい。僕には三枝さんが必要なんです」


「……信じて、いいんですよね」


「うん。もう二度と、あんな思いはさせない……」



先生はそう言って、明るい道端だからか遠慮がちに、私を抱き寄せた。


――――これで、良かったんだよね……?

小夜子さんを思い出させる沖縄の地とも、あと少しの時間が過ぎればお別れだ。


そうすれば、きっと不安だって自然に薄れる。


先生は、私とこれからの時間を重ねてくれる。

< 234 / 410 >

この作品をシェア

pagetop