金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「今週末だと、嬉しいのですが」
「どうして……ですか?」
「日曜が、誕生日なんです」
にっこり笑った先生を見て、私は四月に初めて先生と話した(私は無視してたけど)時のことを思い出した。
『三枝……千秋と言うんですね。秋の字が僕と同じです』
確か、そんな風に言っていた。
秋人って名前はやっぱり、秋生まれだからなんだ。
私が千秋なのも、来月が誕生日だからだ。
「じゃあ……日曜日に、一緒にお祝いしますか?」
「……うん、そうしよう。あ、プレゼントのリクエストがあります」
え、どうしよう……高価なものとかだったら私のお小遣いじゃ足りない……
不安げな表情を浮かべる私を見て、先生はクスリと笑った。
そして私の耳元に唇を寄せると、あることを囁いた。
私は途端に火がついたように全身が熱くなり、早すぎる心臓のリズムにくらくらと目眩がした。