金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
私が、スカートの上で握りしめていた手に、大きな手がふわりと重ねられた。
あったかくて優しい、大好きな手……
「やっぱり、今日は止めておこう……千秋は僕のために、無理しようとしてる。きっとまだ、心の準備が足りな――――」
「やだ!私、今日先生とします!そうしなきゃ、ずっと不安なままだもん!」
急に大声を出した私に、先生は驚いて目を見開いた。
私は、声を絞り出すようにして言う。
「確かなものが欲しいんです……先生が私を必要としてるって解るような何かが……だから……」
「…………わかった」
ぐい、と腕を引かれて、私は先生の胸の中に倒れ込んだ。
そして顔を両手で包み込まれて、瞳を覗かれる。
「……決して、やけになっているわけじゃありませんよね?」
「……やけなんかじゃありません。ちゃんと、考えて、それでも先生に抱かれたいと思ったから……」
先生の長い睫毛が、伏せられた。
……それを認めた瞬間に、唇に柔らかいものが触れた。
「……今から、きみを愛します」
先生は私の耳元で囁き、もう一度優しいキスで私の唇を塞いで……
そうしてゆっくりと、畳の床に私を倒していった。