金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……怖い?」
先生はそう言ってから、私の固く閉じられた瞼にキスをして、そこにも甘い麻酔を打ってしまう。
私の瞳は自然と開いて、愛しげに私の姿を映す先生の瞳をとらえた。
私は曖昧に頷き、ぽつりと呟く
「……先生のことは、怖くありません。だけど先生にがっかりされるんじゃないかと思うと……怖くて」
先生は、私よりずっと大人で……
私は身体も心もまだ発展途上な子供で……
きっと先生の望むような、大人の抱き合い方はできない。
「……千秋」
「……はい」
「綺麗です……とても」
ゆっくりと、先生の手のひらが私の肌の上を滑る。
買ったばかりのシーツの質感を確かめるように、何度も何度も往復して……
すると私の中に、初めて感じる不思議な心地よさが生まれた。
触れられた部分が熱を持って、まるで溶け出してしまいそうな……
「先、生……」
自分の身体に起きた急激な変化に戸惑いながら苦しげに先生を呼べば、彼は困ったように言う。
「そんな顔をされたら、がっかりどころか……」