金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
先生の身体と畳に挟まれて少し痛む背中
指を絡ませ、固く握り合った手
先生の額に浮かんだ、光る汗の粒
「千秋…………」
確かなものが欲しいという私のわがままに応えるように、何度も名前を呼びながら、先生は私を求めた。
「せん、せ…………」
私の瞳からこぼれて畳を濡らした涙は生理的なものじゃなく……きっと、嬉しさと、愛しさで溢れてしまったもの。
私は初めての経験だったけれど、やっぱり怖くなんてなかった。
身体の隙間を埋めることは、心の隙間も同時に満たしてくれるのだということを知った。
大好きな先生の背中につかまって……
どこかへ飛んでいきそうな意識を繋ぎ止めて……
甘い金木犀の香りの中で、私たちはいくつものため息を重ねた。
結ばれることの喜びを、一身に感じた、穏やかな秋の午後だった。