金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
家族…………?
――あ、思い出した。
夏に海に連れていってもらったときに乗った白い車。あれは確かお姉さんのものだって言ってた。
と、言うことは。この女の人が……
「――――姉さん、近所迷惑だからやめてください」
ようやく中から出てきた先生は、見たことのない不機嫌そうな顔をしていた。
「あんたがさっさと出てこないのが悪い」
「よりによって、今日訪ねてこなくても……」
「何よ、あたしに見られちゃまずいことでもあるの?」
いつも穏やかで優しい笑顔を浮かべているのに……家族の前だとあんな顔するんだ。
新たな発見を少し嬉しく思いながら成り行きを見守っていると、不意に視線を上げた先生が私の姿に気づいた。
「あ」
「……あ?」
お姉さんもそれに気づいて振り向き、不思議そうな顔で私を見た。