金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「……姉さんが僕の姉でよかったと、今初めて思いました」


「そうでしょそうでしょ……って。え、今、初めて?」


「冗談です。ありがとう。ついでに父さんと母さんにはまだ内緒にしてもらえますか?」


「わかってる。でも冬休みには実家に帰りなさいよ?母さんたちもあんたのこといつも心配してるんだから」


「……そうですね、後で電話してみます」



先生はそう言って、玄関の扉に手をかけた。



「あ、あの……私、今日は帰った方がいいですか?」



先生とお姉さん、きっとまだ話すことがたくさんあるんじゃないかと思った私は言う。



「「どうして?」」



二人はまるで双子みたいに、声を揃えた。



「え、と……私が居たら、お二人が話しづらいんじゃないかなって」


「あら逆よ千秋ちゃん、私の知らない秋人の話を是非聞かせて欲しいわ」


「……千秋。この人に余計なことを言わないように」


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