金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
二人のやりとりが面白くてクスクス笑ってる間に、気がついたら家の中に移動していた。
先生はお茶を入れにキッチンへ向かい、私とお姉さんは居間にならんで座った。
窓から見える庭に視線を向けると、金木犀はすっかり花の時期を終えていて、寂しくなった庭には植え替え途中のサルビアと、小さなスコップが転がっている。
「――ねぇ、千秋ちゃん。少し聞いてもいいかな?」
「はい」
お姉さんは優しくていい人。
さっき玄関先でそうインプットされたから、すっかり気を緩めていた私の耳に届いた質問は、こうだった。
「もしも、小夜ちゃんが生きてるとしたら……秋人はどうすると思う……?」
サルビアの色と同じ、真っ赤な唇が紡いだ言葉。
その意味がわからなくて、私は彼女をただ見つめ返すだけ。
お姉さんにふざけている様子はない。
そうでないからこそ、怖い。
どうしてそんなことを訊くのかわからない。
わかりたくない……