金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

待ち合わせは、角田先輩が放課後私たちの教室まで迎えに来てくれるということだった。


先にホームルームを終えて手持ち無沙汰な私たちは、ポーチを開いてメイクをすることにした。



「ねーねー、千秋はどうしてそんなにナチュラルにアイラインが引けるの?」


「え?私引いてないけど」


「うっそ!マスカラだけでその目の大きさなの!?あ~神様って不公平」



大袈裟に嘆きながら、有紗は初デートのためにせっせとメイクに精を出していた。

パウダーでテカリを押さえてリップを塗り直しただけの私は時間を持て余してしまい、先輩まだかな、と廊下に目を向けた。


すると、開け放たれたままの扉からひょこっと、ある人物が顔を出して私を手招きした。



「…………何の用よ」



急に低い声を出した私に気づき、有紗も私の視線を追った。



「恩ちゃん……?」


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