金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
言葉を失う私を見て、お姉さんは言う。
「驚くってことは……小夜ちゃんのことは知っているみたいね」
「はい……先生から聞きました」
「……そう。その話をちゃんとしたってことは、千秋ちゃんとのこときっと真剣なのね。それなら、本当のことは言わない方がいいかもしれない……」
……本当の、こと?
「なんですか……本当のことって」
私は震える声で聞いた。
聞きながら、同時に耳を塞ぎたいと矛盾したことを思った。
きっと私の知りたくないことを言われるんだと、本能が感じ取っていたのだろう。
「秋人に言うかどうかは、千秋ちゃんに任せるけど……」
どくんどくんと、脈が速まる。
暑くもないのに、畳に触れている脚に、いやな汗がにじみ出す。
私は、あれからずっと付けている胸元のペンダントに触れた。
気持ちを落ち着かせるように。
ショックで倒れてしまわないように。
「小夜ちゃんは、
生きてる――――……」