金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


死んだと思っていた人が実は生きていた……

それはきっと、本当なら、喜ばしいことなんだろう。


それなのに、彼女が生きてない方が良かったなんて残酷なことを思う自分に、心を支配されそうになる。


私、どこかおかしいのかな。

私が、先生を好きになったのが悪いのかな。


もう引き返せないくらい好きになっちゃったのに、先生の愛したひとはどうしていつも、私の幸せを揺らがすんだろう。


初めて体を重ねたあの日を境に、私たちの絆はより強く確かなものになったと信じていたけど……

もし先生がこのことを知ったら、どうなるの?

修学旅行の夜のように、簡単に小夜子さんを選んでしまうの?


そんなことない、先生を信じよう、と胸を張って言えないのは、過去の幻影だと思ってた相手が、生身の人間に変わったからだ。




――――私はきっと。生きた小夜子さんには勝てない……


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