金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「……黙っているのは、卑怯でしょうか」



私はお姉さんを見つめて、頼りなく呟く。


お姉さんはさっき、そのことを先生に伝えるかどうかは私に任せると言った。


……だったら、私は言いたくない。


言ってどうなるのかを知りたくない。


ずるい子でもいいから、このまま先生と一緒に居たいよ……



「卑怯なんかじゃないわよ」



そう言って、お姉さんがふっと笑った。



「……ごめんね。本当なら千秋ちゃんと秋人を応援してあげたいんだけど、私は小夜ちゃんと秋人がどれだけ素敵な二人だったかも見てきたから、どちらの味方もできなくて……

小夜ちゃんのことについてわかっているのは、沖縄のどこかの離島で暮らしてるってことだけなの。もう少し調べてみるつもりだから、もしも千秋ちゃんの気が変わって小夜ちゃんのことを知りたくなったらここに連絡をちょうだい?」



お姉さんは、鞄から手帳を取り出しさらさらと電話番号を書き込むと、そのページを破って私に差し出した。


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