金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「わかり、ました……」



私はそれを受け取ってポケットに仕舞ったけれど、気が変わることなんて一生ないと思う。

このメモを使う日は、きっと来ない。



「……さて、それじゃ私はそろそろ帰ろうかな!」



お姉さんは、そう言って立ち上がりうーんと伸びをした。

と、同時に部屋の扉が開き、お盆を持った先生が現れた。



「秋人、私もう帰るね?千秋ちゃんとも仲良くなれたし」


「え?もうですか?いつも紅茶の入れ方にうるさい姉さんのために、今日はカップを温めるところから始めたのに……」


「ごめんね、秋人が元気だってわかればもういいの。それに、二人のデートの邪魔になっちゃうし」


「……ああ、邪魔という自覚はあったんですね。よかった」


「秋人、姉に向かってその態度はよくないわよ」


「……もう早く帰ってください」



来たときのような小さな言い合いをしながら、二人は廊下に消えていく。

私も慌てて立ち上がり、玄関でお姉さんを見送った。


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