金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「待ってください!本当に何があって――――……」
「先生」
私は靴を履いたところで振り返り、一段高いところにいる先生を見上げた。
わけがわからなくて焦っているような表情をしている。
……私のことで、そんな顔をしてくれるのが嬉しい。
この人を、この幸せを手放すなんて、できないよ……
「明日も明後日も……来年も再来年もずっとずっと、私のそばにいてくれますか……?」
真実を知らない先生にこんなことを聞いても、意味はないのかもしれないけど……
それでも、先生の口から私を安心させる言葉が出てくるのを期待して、私は聞いた。
すると先生は靴下のまま私のいる場所まで降りてきて、私を強く抱き締めた。
「ずっと、きみのそばにいます……僕だって、千秋がいなければ寂しくて苦しいんですよ。きみと一緒です」
「先生……」
「だから……まだ帰したくない」
ふっと体の熱が離れたと思ったら、代わりに先生の唇が降ってきて、私の唇をふさいだ。