金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
キスをひとつする度に、好きの気持ちが大きくなって。
先生を失いたくないって思う気持ちも同じくらい膨れ上がって。
幸せと不安がいつも隣り合わせの私の心は、切なくて張り裂けそうになる。
「………んっ…」
いつのまにか倒されていた廊下の冷たい床の上で、重なりあってもそれは同じで……
どんなに激しく求められても、初めてのときのような満たされた想いは得ることができない。
「せん、せ……」
肌の隙間はないのに、どこかから勝手に忍び込んでくる不安が快感の邪魔をする。
「千秋……僕を見て」
先生はいつもと同じに、潤んだ瞳で私を見つめてくれる。
愛しそうに、まっすぐ。
こんなに幸せなこと、他にはないのに……
どうしてそこに映った私は、幸せそうじゃないの?