金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「変態にもなります。こんなに可愛い子が恋人だったら誰だって……」
先生が私の肩の辺りの髪をすくって、そっと口付けた。
「先生、ここ外です……!」
私はそう言って、恥ずかしい台詞をさらっと言ってのける先生にドキドキする自分をごまかす。
「暗いから大丈夫ですよ。これからもっと陽が落ちるのが早くなったら、僕たちが外を歩ける時間も増えますね」
「そんな、わざわざ人目に触れるようなことはしたくないです……もしも学校の誰かに見られたら……」
「――――その時は、その時です」
のんびりした調子でそう言う先生には、全く危機感がないみたいだ。
周囲にばれて、お別れしなくちゃならなくなったら、先生は悲しくないのかな……
あ、だめ。
せっかく普通に会話できていたのに、また心に黒い雲がたちこめてきた。
心の隅に追いやっていた小夜子さんのことも、再び私の胸をもやもやさせる。