金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

これ、捨てちゃおうかな……

持っていると気になって、電話をかけてしまいそうになるから……


家に帰った私はポケットの中に入れておいたあの紙をくしゃっと丸めて、自分の部屋のごみ箱に投げ込んだ。


けれどその紙は、まるで“捨てないで”と言っているかのごとく、ごみ箱から外れて床に落ちた。



「なんでよ……」



それを拾って、もう一度捨てようとした私の手が直前で止まる。


捨てたいのに、なぜか手がそれを拒否する。



「……先生のためを思ったら、どっちがいいんだろう……」



自分のことだけ考えれば、こんなもの捨てて事実には蓋をしてしまえばいい。


だけど、どっちが先生にとって本当の幸せなんだろうと思うと、私と一緒に居る方がいいにきまってる、と自信を持つことができない。


いつまでこの繰り返しをすればいいんだろう……

一体、いつまで……



結局私はメモを捨てずに、机の引き出しにしまいこんで鍵をかけた。


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