金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
スターチス
文化祭準備に追われる11月の最初の週。
メイド喫茶は先生の大反対によって阻止され、うちのクラスの出し物は全く別のものになった。
「……うるさいな、もう」
きらきらしたモールや安っぽい造花のバラに埋め尽くされ、異様な雰囲気に包まれる教室で私はぶすっとしていた。
教卓周辺に群がる女子の集団がうるさくて、耳がキンキンする。
「うーん、しょうがないよあれは。うちらの年じゃまだスーツの似合う男になりきれてないからね」
「うん……それにやっぱり恩田先生、カッコいいし」
有紗と菜月ちゃんが交代で慰めてくれるけど、私が怒ってるのは別にホストの格好をした先生がもてているからではない。
「忘れちゃってるのかな……」
今日は、私の17回目の誕生日。
学校で堂々と祝ってほしいとは思わないけど、一言“おめでとう”と言われるのを一日中待ってるのに……
放課後になっても、先生は私と話そうとしてくれない。
色画用紙で手作りのドリンクメニュー(もちろん内容はソフトドリンクだけ)を作る作業にも飽きてきたし……
「今日はもう、帰っちゃおうかな……」