金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
カウンセリング室は普段、週に三回ほど来るスクールカウンセラーに何か相談したいときに使う部屋だ。
教室よりせまく、二脚の椅子とテーブル以外に目立った物は置かれていない。
ただ、テーブルの上に細長いガラスの花瓶があって、薄いピンクのスイートピーが活けてあった。
「座ってください」
恩田のその言葉は無視して、私は出入り口の扉付近に立っていた。
もちろん、すぐに逃げられるようにだ。
「話なら、ここで聞きます」
「そう。……じゃあ、時間もないから単刀直入に聞くけど――――」
「きみを苦しめているものは、一体なに……?」
さっきまで穏やかだった恩田の声が急に鋭くなり、彼の方を向かなくても気づくほど強い眼差しが、私を突き刺していた。