金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
杉浦くんがどんなにひどいことをされてきたのか、さっきの一場面を見ただけでも想像できてしまって胸が痛くなる。
しかも、助けてくれる人が誰もいない……
私はふいに、過去の自分を思い出した。
出口の見えない岡澤からのセクハラを、誰にも言えずに苦しんでいたあの日々のつらさを。
杉浦くんの抱える痛みとは種類が違うかもしれないけど、痛みを抱える者同士……
私は彼の力になりたいと思った。
「杉浦くん……私にできること、なにかないかな……」
女だし、喧嘩とかは無理だけど……話を聞くくらいならできるから。
だからどうか頼って欲しい。
独りで抱え込まないで。
「……じゃあ、僕と付き合ってくれる?」
「う…………ん?」
今、杉浦くん、付き合ってって言った……?
キョトンとする私を見て、杉浦くんはふっと笑った。
「嘘だから気にしないで。三枝さんの好きな人は知ってるし」
「あ……」
そうだった。
修学旅行の時に同じ班のメンバーに、先生とのことがばれてしまったんだ。