金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「有紗、菜月ちゃん……実はお願いしたいことが……」
旅行の日のアリバイ工作を頼みたい、そう言ったら二人はすぐに了解してくれた。
付き合いの長い有紗の家だとうちの親から有紗の親に連絡が行ってしまうかもしれないから、菜月ちゃんの家に泊まる、ということで口裏を合わせようということになった。
「いいなー、旅行かぁ」
「うらやましいな、千秋ちゃん。木村先生はそんなことする勇気絶対ないもの」
「周囲の目が心配ではあるんだけどね……」
「千秋がうんと大人っぽくしていけば、普通に大人の恋人同士に見えるんじゃない?」
「あ、それいいね。いつもよりメイクもきっちりして、お姉系の服着れば女子高生には見えないかも」
私以上に盛り上がる二人が、当日の私の服装についてあーだこーだと言い始めた。
背伸びした服装でのデートに苦い思い出のある私はちょっと複雑な気分だった。
あれは相手が悪かったんだし、今回は目的が違うから大丈夫だと思うけど……
「そうと決まれば早速今日の帰り、服見に行こう!」
「いいね、私も行く」
「え、二人とも試験勉強は……?」
すっかりスタイリスト気分の二人にそう問いかけてみたけど、二人とも聞く耳は持たず。
一日くらいいいかな……と、私も付き合うことにした。