金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
私は一瞬動揺しかけたけれど、すぐにそんな自分を打ち消して不機嫌そうな顔を作った。
……そんな迫力で私を圧倒したところで、私はアンタを信用したりしない。
どうせ心配している“振り”なんでしょう?
そんな演技で本音を引き出せると思ったら大間違いだ。
「……別に、苦しんでなんかいません。私がいつも反抗的な態度なのは、先生のことがただ嫌いだからです」
私のいい加減な答えに、恩田は小さくため息をついた。
そんなことは嘘だと、わかっているようだった。
「他の先生方にも色々聞いたんだけど、きみが反抗的になるのは男の先生の前だけみたいだね?
これは勝手な僕の予想だけど……過去に何か、男の先生に嫌なことを言われたか、されたかしたんじゃないのか?」
…………両方、だよ。
口には出さずに胸の内で呟く。
だからこうなってしまったのだ。
本心では悪い先生じゃないとわかっていても、反抗的な態度を取ってしまう厄介な生徒に。