金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
住所と電話番号をメモした紙が、どんどん滲んでいくのは何故だろう……
口のなかにしょっぱい水が流れ込んでくるのは何故だろう……
『千秋ちゃんの代わりに、私が伝えようか……?』
「大丈夫、です……私が……ちゃん、と……っ」
『これは大人の問題だから、きちんと伝わらなければ困るし……』
「……旅行、に、行くんです……」
『え……?』
「冬休み……一緒に、スキーしようって、先生が誘ってくれて……
だから、それが終わるまでは……っ」
『…………わかった。それまではなにも口を出さない。
ねぇ千秋ちゃん。私のこと、なんて意地悪なオバサンなんだろうと思ってるかもしれないけど……
あなたまだ若いんだから、もっと楽な恋をした方がいいわ。秋人なんて面倒くさい男はもうやめちゃいなさいよ』
「…………どう、やって?」
ああ、こんなこと聞いたってお姉さんを困らせるだけなのに。
でも、聞かずにはいられない。
「どうしたら、やめられるんですか……っ?」
やめられるものならとっくにやめてるよ。
それができないから泣いているんじゃない。
やめろって言うなら教えてよ……
先生を嫌いになる方法を
教えて――――……