金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
『千秋ちゃん……』
お姉さんはそう言ったきり何も言葉を発しなくなり、沈黙の中に私のすすり泣きだけが響く。
きっと電話越しに聞いたら、うるさいんだろうな……
『あなたがそこまで本気だとは思わなかった……ごめんなさい。――旅行、気を付けて』
最後にそんな言葉を掛けられ、電話は切れた。
手の中から携帯がぼとりと床に落ちる。
液晶は涙でびっしょりだった。
私はベッドに倒れ込み、濡れた顔を枕に押し付けた。
…お姉さんが謝ることじゃない。
私が……
私が……先生を好きになり過ぎたのが悪いんだ。
諦められる気は、全くしない。
だけど、覚悟を決めなくちゃ……
旅行の日までにうんと泣いて、涙を涸らしたら……
そしたら、
先生と、サヨナラだ――――。