金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
だけど、私にはそんなこと関係ない。
別に恩田に限ったことじゃなく、“男性教師”という生き物全員を嫌っているのだから……
「三枝(さえぐさ)さん」
恩田が私を呼ぶ。出席を取っているのだ。
けれど私は窓から目を離さない。
……居るのは、見ればわかるでしょ?
「三枝…千秋(ちあき)という名前なんですね、秋の字が僕と同じです」
……だから、何?
秋のつく名前なんてありがちだし、別にアンタとお揃いなわけじゃない。
私は完全に恩田を無視して窓の外を見る。
「……じゃあ次、白石さん」
……良かった、諦めてくれた。
私は誰にも悟られないようにため息をつき、また桜に神経を集中させる。
落ちてゆく花びらをただ眺めるのはひどく退屈だったけれど、恩田の顔を見ているよりはましだろうと思って。