金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「おい曽川、俺の有紗に乱暴すんなよな」
「あーはいはい、そんじゃ千秋ちゃんも来たことだし、行こっか」
「……有紗、ほら」
角田先輩がさりげなく、有紗に手を差し出す。
有紗が顔を真っ赤にしながら自分の手を重ねると、角田先輩は満足そうに目を細めて笑った。
良かった……有紗、すっごく幸せそう。
角田先輩もいい人そうだし、上手く行って欲しいな。
「……俺らもつなぐ?」
ふいに高いところからそんな声が降ってきて、私は声の主を見たまましばらく固まってしまった 。
つなぐって……誰が……何を?
「冗談だよ、そんなにらまないで」
「その見た目で言われると冗談に聞こえません。っていうか……どうして今日は四人なんですか?これじゃまるで――――」
「もちろんダブルデートだよ?俺と千秋ちゃんが仲良くなるための」
曽川先輩が人懐っこい笑みを浮かべてそんなことを言うので、私は思わず目をそらして胸に手を当てた。
うそ……私、今……
ドキドキ、してる……?