金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

先生の番号が入った携帯は、なんだかとても大切なもののように思えた。

もともと大切な家族や友達の番号はたくさん入っているけど、やっぱり先生は特別だ。


アドレスも交換したけれど、先生はメールが苦手らしく、できれば電話の方がいいと言われた。



「……どんな文章にするのか悩みすぎて、長くなるし時間もかかるので」



理由を聞くと、苦笑しながらそう教えてくれた。



「国語の先生なのに?」


「……だからですよ。どうしても、凝ったことを書きたくなってしまうんです。千秋に送るメールなら、きっとなおさら」



……なんだか、先生らしい。


私はあたたかい気持ちになるのと同時に、ちゃんと先生を信じて待っていようと心に決めた。


寂しくなったら電話して。


始業式の日に、笑って会おうって。


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