金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
仲良く手をつなぐ有紗たちカップルの後ろで、私たちは無言で歩いた。
隣の曽川先輩をときどき盗み見ては、「なに?」と聞かれて「なんでもありません」と目をそらす、その繰り返しを何回しただろう。
芽生えかけている感情が、私の胸をうっとうしいくらいにつついてくすぐったくて。
触れているわけでもないのに、曽川先輩の歩く右側だけ、私の皮膚は緊張して、熱い。
教師以外の男性と話すのは問題ないとはいえ、やはりどこかで岡澤のことが引っかかっていて、私が男の人を好きになる日なんてきっと来ないと諦めにも似た気持ちを抱いていた。
こんな風に特別な異性として意識する人物が現れるなんて思ってもみなかった。
この気持ちを恋と呼ぶのかどうかは知らないけれど……
私……
曽川先輩に、惹かれている。