金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

始業式が終わって、学年主任から帰っていいと告げられてもなかなかみんな帰らなかった。

どうして恩田先生が教室に来ないのか腑に落ちなくて、帰るに帰れないみたいだ。


私も、先生に会わずに今日を終えるなんて嫌だ……

だけど、ここで待っていても先生が来るとは限らない。


どんなに遅くなっても、確実に先生と会える場所へ行こうと私は立ち上がった。


それをきっかけに、他のクラスメイトたちも待つことを諦め、ぱらぱらと教室を出ていく。


「――千秋」


扉のところで、有紗が私を呼び止めた。

私の頬を両手でむにっと引っ張り、こんなことを言う。


「なんかあったら、すぐ言うんだよ。部活放り出して飛んでくから」


「有紗……うん、わかった」


「私も行くわよ、一人で泣いたら許さない」



有紗の背後から来た菜月ちゃんも、彼女らしい一言で私を勇気づける。



「二人ともありがとう……行ってきます」



向かうのは、先生の家。

あそこで待っていれば、先生はきっと逃げられない。


そして私も逃げない。

ちゃんと話を聞くまで、絶対に帰らない……


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