金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……いつから、ここに?」
私に布団を掛けながら、先生が静かに聞く。
「学校が終わって……まっすぐ来ました」
「お昼ご飯は?」
「食べてません……」
私の返答に、先生は困った顔をして、でも観念したようにため息をついた。
「……今日、僕がクラスに行かなかった理由を訊きに来たんですね?」
「……そうです。それに、春休みに会ってくれなかった理由も……」
先生は、黙り込んでしまった。
瞳を伏せて、じっと何か考えているみたいだった。
そのまま待っていたら不安を抱えきれなくなりそうだった私は、自分から言葉を発した。
「私たちのこと……ばれちゃったんですか?」
「え……?」
「校長先生に呼び出されてたの、知ってます。それで別れろって言われたんじゃないんですか?」
「千秋……それはちが――」
「じゃあ、お見合い?私を避けるくらいだから、きっと素敵な人と出逢ったんですね、それなら私は潔く……」
潔く……身を引くなんて、できないよ……
私は溢れてきた涙を隠すように、布団を引っ張り頭からかぶった。