金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「……そんなことまで、考えさせてしまっていましたか。……ごめん、千秋……」



ごめん……

それは、どういう意味……?

私は布団の中で、先生に問いかける。



「千秋の言ったようなことはありません……関係がばれたわけでも、もちろんお見合いをしたわけでもない。
校長に呼び出されたのは、もっと別の理由です」



私は、目だけを布団から覗かせて先生を見た。

憂いを帯びた横顔が、どこか遠くを見ている気がした。


やがて意を決したように深呼吸をし、私を見た先生の目は、くもり一つない、綺麗なものだった。






「僕は……きみたちの卒業を見届けられないかもしれない」







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