金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

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『卒業を、見届けられない……?』


『――まだ、はっきりと決まったわけではないんですけど……今年の秋から二年間、海外に行くことになりそうなんです』


『海、外……』


『開発途上国の子どもたちに勉強を教えるボランティア活動があって……校長が、うちの学校からは僕を推薦したんです。

30歳未満で、特に持病がなく、実務経験もそれなりにある者でないと参加資格がないのですが、僕はそれを満たしているので……』



私は、全く現実味のないその話をただ聞いていた。

言ってることはわかるけど、きちんと理解することを脳が拒んでいた。



『……一度は、断りました。これから受験に向けての大事な時期に担任が変わるなんて、クラスの皆を混乱させてしまうし……
なにより、千秋を置いて行くなんて、できそうにないと思ったから……』



そう言って、私の髪を撫でた先生。

でも、全然嬉しくなかった。

だってもう、先生の中に迷いはないように見える……



『でも――――』



――ほら、やっぱり。

“でも”とか、“だけど”とか言うと思った……


先生は、行くことを決めている。


私を置いて行ってしまうことを、決めている。


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