金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「そう言われたら、なんにも言えないけど……でもさ、恩ちゃん……」
一番前に座る女子がそう言って、何故か後ろを振り返った。
たまたま目が合って首を傾げていると、彼女だけでなくクラス中の視線が私に注がれた。
な、何……?
「千秋ちゃんのこと、置いてくの……?」
私は一瞬、耳を疑った。
それを言った女子は、クラスの中でも特に仲がいいというわけじゃない。
だからもちろん、先生とのことを話したことなんてないのに……
「そうだよ恩ちゃん、隠してたみたいだけど、クラスのほとんどが知ってるよ。
卒業したら二人はやっと堂々と付き合えるんだなって思ってたのに、こんなの千秋ちゃんが可愛そう……」
今度は別の子がさらっとそんなことを言うので、私はどうしたらいいかわからなくて、思わず助けを求めるように先生を見た。