金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
先生も私と同じで驚いた表情をしていたけど、やがて小さくため息をつくと苦笑しながら言った。
「……知っていたんですか。もしかして、全員ですか?」
「男子はどうだか知らないけど女子はみんな知ってるよねー」
「俺は知らなかったけど、なんとなくそうかなとは……」
「俺も」
「つか恩ちゃん、三枝のこと見すぎだし」
「あはは、確かにー」
ハラハラする私の心と裏腹に、教室は何故だか和やかな雰囲気に変わっていた。
有紗や菜月ちゃんも、みんなと一緒に笑ってる。
「――――三枝さん」
しばらくすると先生が、学校での呼び方で、私を呼んだ。
「はい……」
「僕が旅立つことについて、きみはどう思っていますか?」
がやがやしていたクラスメイト達が、一気に雑談を止めて私を見た。
私の、気持ち……
始めはとうてい受け入れられなかった先生との別れ。
行かないでと泣いてすがったあの日は、熱まで出したっけ……
それから、ほんの少しずつだけど、変わってきた私の気持ち。
こう思えるようになったのはごく最近だけど……
離れていても、きっと心は側にある。
私は先生を信じて、待っていたい……