金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

私は静かに立ち上がって、小さな声で語り始めた。



「――先生が、遠くに行っちゃうのは、悲しいし寂しい……

さっき誰かが言ってくれたみたいに、卒業したらやっと普通の恋人同士になれるって、楽しみにしていたし……

だけど……」



言いながら、私は思った。

もしかしたら、今から言おうとすることは先生にまだ言ってなかったことかもしれない。

ちゃんと言葉にしてなかったかもしれない。



「私は……」



今、この場が与えられてよかった。


みんなの前で、先生に誓うよ――――。



「――私は、先生に夢を叶えて欲しい。夢を叶えて帰ってくるのを、待ってます。普通の恋人同士になるのは、それからでもきっと遅くないと思うから……」




「――――千秋、よく言った!!」



有紗のそんな掛け声がきっかけとなり、教室中から拍手が沸き起こった。


照れながら先生を見ると、先生は声を出さずに口だけ動かして「ありがとう」と言っていた。


あんなに怒っていたクラスメイト達が、今では私と先生を笑顔で見つめてる……


みんな、優しい人、ばっかりだ……


こんなに素敵なクラスなのは、きっと先生が担任だったからだね……


じわりと潤んでくる瞳を見られたくなくて、私はストンと椅子に腰を下ろした。


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