金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

やがて授業終了のチャイムが鳴り響き、今日の日直である男子が仕方なく号令をかけた。



「起立…………礼」



ありがとうございました、と声に出しながら何人かの生徒は深々とお辞儀をし。


何人かの生徒はそれが上手くいえずに、声を詰まらせている。


誰かが鼻を啜る音も、教室のあちこちから聞こえる……



「――――困ったな……」



先生が、そう呟きながら後ろを向いた。

その声がかすかに震えていて、またみんなの涙を誘ってしまう。



「笑顔で別れたいって……こないだ言ったじゃないですか……」



私たちの方に向き直った先生はもう、完全にくしゃくしゃの泣き顔で。


ずっと堪えていた私の涙腺も、それを見たら崩壊してしまった。


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