金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「――千秋の考えてること、わかりますよ」
先生が、穏やかな調子で言う。
「僕も……今の気持ちで千秋を抱くのは少し怖いです。いつもみたいに気遣ってあげられる余裕があるかどうか……自分の欲望のままに抱いて、壊してしまいそうで……」
「……先生」
「だったら我慢すればいいんでしょうけど、それはできそうにありません。お願いです……最後にもう一度……千秋のすべてを感じさせて……?」
私の肩を抱き寄せた先生が、余裕のない声でそう言った。
じっと見ていなければわからないほど小さい動作で頷いた私は、先生に抱きかかえられてあっという間に布団の上に転がされていた。
私の腰のあたりにまたがって、急くように服を脱ぐ先生を見ながら、私はぼんやりと思う。
いっそ、壊されてしまうのもいいのかもしれない……
胸の痛みが麻痺するぐらいに激しく抱かれて、動物のようになってしまえば……
そうすれば、悲しいと思う間もなく今日が終わってくれているかもしれない。
最後の貴重な時間なのに、そんなことを思うなんて、矛盾しているのかな……
わからない。でも、目の前の先生が、ただ愛しい……