金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「それ……土居くんにはすぐ消せって言われてたけど、いい写真だと思うから、データを消す前にどうしても現像したかったんだ」
「杉浦、くん……」
ぽたり、ぽたりと、写真の上に涙が零れた。
それは修学旅行の時の、懐かしくて少し恥ずかしい写真。
部屋のドアが閉まるまで待てなかった、私と先生の抱き合う姿……
「――あ、杉浦が三枝のこと泣かしてる!」
「べ、別に僕は……」
「……杉浦くん」
「ご、ごめん!気に入らなかった……?」
私はふるふると首を横に振って、大切な写真を胸に抱きしめた。
「ありがとう……私、先生と離れてる間、これを見て頑張るね」
ほっとしたような杉浦くんの顔。
それを笑顔で見守る、いつもの仲間たち。
滑走路から、また一機……大きな飛行機が空へと飛び立っていった。
どんなに離れても、この空はつながってる……
私は今日の空の色を、忘れないでいようと思った。
泣きたくなったら上を向いて。
今日のこの気持ちを、思い出せるように……