金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

高校生の時に肩の辺りで揺れていた髪が、今では背中にかかるくらいまで伸びた。


授業のある日は朝ぎりぎりまで寝ていたいので、おろしっぱなしの手抜きな髪型だけれど……

今日は、少し気合いを入れてアップに挑戦してみた。



「少しは大人っぽく見えるかな……?」



鏡に映る自分を睨んでも、髪が伸びただけであのころから少しも成長してないように見える。


それでもワクワクしながらミュールにつま先を突っ込んで、玄関まで見送りに来たお母さんの方を振り返る。



「じゃあ、行ってくるね」


「行ってらっしゃい。気を付けてね」



――ぎらぎら太陽の照りつける今日は、大学生になってから二回目の長い夏休み。


もう九月に入ったというのに、ちっとも涼しくなる気配がない。


汗をかきながら向かったのは、高校の時に有紗や菜月ちゃんとよく行ったファミレス。

今日はその二人と、高校を卒業してから初めての女子会をするのだ。


夏休みとはいえ課題にレポートに、そしてバイトに明け暮れる私はなかなか時間が作れなかったけど……


今日はあるおめでたいニュースがあるから、絶対に駆けつけたかった。


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