金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「千秋ー!こっちこっち!!」
涼しい店内に入るやいなや、店員さんに案内される前に聞きなれた声が私を呼ぶので、思わず笑ってしまった。
有紗ってば……全然、変わってない。
「有紗、久しぶり!菜月ちゃんは?」
「健診終わってから来るっていうから、少し遅くなるみたい」
「そっかぁ、健診……」
四人掛けの席で向かい会って座り、とりあえずのどがカラカラな私はドリンクバーを取りに行く。
そして席に戻って、アイスティーを一気飲みしてグラスを置くと、有紗がタイミングを見計らったかのようにこんなことを聞いてきた。
「……最近は、恩ちゃんと連絡取ってるの?」
「ううん、全然……先生、忙しいみたいでたまにメールしても三回に一回くらいしか返って来ないから、最近は送るのやめちゃった」
「ええ?寂しくないの?」
「…………寂しいよ、そりゃ。だけど、送ったら返事を待っちゃうから……」
私はそう言って、氷だけになったグラスを無意味にストローでかきまぜた。