金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「―――千秋!一緒に帰ろう」
「うん」
帰りのホームルームが終わるとすぐに駆け寄ってきたのは、渡瀬有紗(わたせありさ)。
中学の時からの付き合いで、私の心の傷を唯一理解する大切な親友だ。
昇降口を出て自転車置き場まで歩く途中で、有紗が私に聞く。
「千秋、やっぱり恩ちゃんでも駄目なの?」
「……そりゃそうだよ。アイツだって男じゃん」
「そうだけど……」
有紗は、私が態度の悪い生徒だというレッテルを貼られることをあまり良く思っていない。
中学の時の私を知っていればそれは当然かもしれない。
どちらかというと優等生の部類に属し、教師にも好かれていた、過去の私を……