金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「千秋こそ……ちゃんと二年間僕をを待ち続けてくれた千秋ですか?それとも……タイムマシンでずるした千秋ですか……?」
「タイム……マシン?」
「自分で書いたのに忘れたんですか?」
――――あ、思い出した。
二年前、先生に渡した寄せ書きに書いた言葉……
“二年後に行ける、タイムマシンがあったらいいのに……”
まだその時は、待つ覚悟ができていなくてそんなことを書いたけど……
改めて言われると、すごく恥ずかしいことを書いたんだって、思い知らされる。
「……そんないいもの、現実にはなかったから……私、ちゃんと待ちました……」
「うん……知ってます。だって、最後に逢った時よりきれいになってる」
「そんなこと……」
「ありますよ。素敵な大人の女性になりました」
先生は、何もかも変わってない。
格好いい見た目も、恥ずかしい台詞をさらっと言ってしまうところも……
「そろそろ……いいですか?」
「なにが……ですか?」
「久しぶりだし、千秋がきれいになったからとても緊張しているのですが……
さっきからその唇を奪いたくてうずうずしてるんです」
にこりと微笑みながらも、少し色っぽい表情に変わってきた先生。
私の顎に手を添えて、愛しそうに私を見つめる。
こうなってしまった先生からは逃げられない。
もちろん、逃げる気もない――――。