金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
春はライラック。
梅雨には紫陽花。
夏はサルスベリ。
秋は金木犀。
冬は椿。
この庭には四季を彩る花や木がいくつも植えてあって、私はそれを見るためによくここを通った。
手入れをしていたのは、住んでいたおばあさん。
通りがけに挨拶を交わすくらいだったけれど、いつも愛情を持って花の世話をしていたおばあさんが、私は好きだった。
でも、彼女は数年前から姿が見えなくなってしまって、この家は今はどうやら空き家になっているみたいだ。
門の外まで鉢植えが出ていた頃が懐かしい……そう思って門の方へ視線を移動させると、あるはずのないものがそこにはあった。
「チューリップ……?」
白いプランターに、三つ並んだチューリップ。
花はまだ、つぼみの状態。
もしかして、誰か新しい住人が引っ越してきたとか――…?