金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
恩田の言っていることの意味はよくわからなかったけれど、真剣だということは伝わったから私は渋々頷いた。
ここで断って乱暴でもされたら、私はまた闇の中に逆戻りだ。
せっかく曽川先輩のおかげで忘れかけていた柔らかな気持ちを取り戻せそうなんだから……
恩田なんかに邪魔されてたまるもんですか。
「……よく似合いますね、その髪飾り」
私が脳内で恩田を威嚇しているというのに、当の本人はのんびりとそんなことを言う。
「……どうも」
「今日はそれを買いに行ってたの?」
「……はい、まぁ」
なんで担任と世間話なんかしなければならないんだろう。
早く家に着かないかな……
「デート……ですか?」
今まではほぼ無表情で会話を切り抜けていたのに、その質問のせいで不覚にも頬が熱くなるのを感じた。
バカ、赤くなるな……!