金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
私の解りやすい反応を見て、恩田は肯定と受け取ったらしい。
ふっと笑ってそれから夜空を見上げた彼はこんなことを言った。
「そっか……安心しました」
「……なんで先生が」
「大切な人が居るってだけで心は強くなるものですからね。そういう人が居るなら、三枝さんの心が壊れる心配もないかなって」
……また、教師ぶってる。
でも、その通りかもしれない。
私に必要なのは恩田の助けなんかじゃなくて。
私が心から大切に想える人……
そして、同じくらい私を大切に想ってくれる人。
「その髪飾りを選んだのは、彼?」
「そう、ですけど……」
「きっと三枝さんをよく見てるんでしょうね。髪の色にすごく合ってる」
「……本当に、そう思いますか?」
私から恩田に質問するなんて初めてのことだった。顔は見れなかったけれど、私なりに精一杯訊いてみた。
本当に、曽川先輩は私をちゃんと見て、付き合おうと言ってくれたのか……
それが、不安だったから。