金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

私の解りやすい反応を見て、恩田は肯定と受け取ったらしい。

ふっと笑ってそれから夜空を見上げた彼はこんなことを言った。



「そっか……安心しました」


「……なんで先生が」


「大切な人が居るってだけで心は強くなるものですからね。そういう人が居るなら、三枝さんの心が壊れる心配もないかなって」



……また、教師ぶってる。
でも、その通りかもしれない。


私に必要なのは恩田の助けなんかじゃなくて。

私が心から大切に想える人……

そして、同じくらい私を大切に想ってくれる人。



「その髪飾りを選んだのは、彼?」


「そう、ですけど……」


「きっと三枝さんをよく見てるんでしょうね。髪の色にすごく合ってる」


「……本当に、そう思いますか?」



私から恩田に質問するなんて初めてのことだった。顔は見れなかったけれど、私なりに精一杯訊いてみた。


本当に、曽川先輩は私をちゃんと見て、付き合おうと言ってくれたのか……

それが、不安だったから。


< 44 / 410 >

この作品をシェア

pagetop