金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……送っちゃっ……た」
急に恥ずかしさが押し寄せてきて、私は携帯をふたの上に置いてお湯の中にもぐった。
どうしよう……あれは冗談だよ、とか言われたら……
私もう、立ち直れないかもしれない……
「……ぷはぁ!」
息が続かなくなってお湯から顔を出し、携帯の背面ランプを見つめる。
さすがにまだ返信はないよね……と思ったのだけれど。
「……もう来てる」
濡れた手をタオルで拭い、携帯を開いた。
先輩とは限らないよね……有紗かも。
ドクンドクンと波打つ心臓を押さえ、受信ボックスを確認する。
「……先輩、だ」
ぎゅっと目を閉じて決定ボタンを押し、徐々に薄目にしながら内容を見た。
『マジで!?超~~~嬉しい!じゃあ千秋は今日から俺の彼女ってことで』
語尾には、私のドキドキの分と同じくらいたくさんのハートの絵文字が使われていた。