金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
その後何通かメールのやりとりをして、土曜日に遊ぼうということになった。
もちろん、今度は二人で。
『おやすみ』というメールに返信してからも、私は全く眠れそうになかった。
……胸が苦しい。
でもそれは岡澤の植え付けたものとはまったく別の種類の痛みで、不快感はない。
痛みが心地良いなんて、初めて知った。
このまま一晩中眠れなくても、今夜はずっとこの甘い痛みを抱きしめていたい。
「曽川先輩……」
部屋にいるのだから誰も聞いているはずはないのに、それでも恥ずかしくて枕に顔を押しつけながらその名を呟く。
やっぱり、私、本当に……
好きになっちゃった、みたい。
ベッドの上でごろごろ転がりながらそんなことばかり考えていた私は……
中学を卒業してから初めて、あの儀式をしないで一日の終わりを迎えた。