金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「――今年も6月にスポーツ大会があります。後ろにプリントを貼っておきますので、みんな自分の出たい競技を考えておいて下さい」
ホームルームで恩田がそんな連絡をした。
スポーツ大会……か。
今年もリレーかな……
球技はまるで駄目だけど、走るのだけは得意な私。
あまり他の人はやりたがらないし、大会の最後に行われるリレーまではのんびり応援に徹することができるし……
「それから、実行委員をクラスで一名決めなきゃならないんです。誰か立候補してくれる人は居ますか?」
しん、と静まりかえる教室。
恩田はしょんぼりとした様子で呟く。
「仕方ないですね……来週の火曜に初めての実行委員会が開かれるので、それまでに気が変わったら言って下さい」
ホームルームが終わって恩田が教室から出て行くと、クラス中からため息が聞こえた。
……こんなんじゃ気が変わる人なんて、一人も居なそうだ。